スマルトには、双子の兄がいる。

 彼らは双子だけあって、家族でさえ見間違えるほどうり二つだった。

 瞳の色をのぞいては。

 レイガートは淡いパープル。

 スマルトはブルー。

 本来なら、弟・スマルトではなく、兄・レイガートが王位を継承するはずだった。

 だが彼は、王位継承の式典を目前にして失踪してしまったのだ。

 現在、彼は行方どころか、生死までもが不明のまま。


「――私は、今も尚、兄の存在を欲している。王という地位の重さに、今にも押し潰されてしまいそうだ」


「けど、レイガートに全てを任せたいなんて思っちゃいないだろ?」


「……勿論……そのつもりでいるよ。けど、人の感情は常に変わるものだからね」


 どこか不思議な表現をする彼に、クロードは頸を傾げた。


「利用できるモノは全て利用する。私には君と同様、譲れないモノがあるからね」