「クロード……」


 聞こうとして、ラーンは口を閉ざした。


「第一決勝戦に出場の戦士は闘技場に入って下さい」と声が掛かった所為もあるが、何となく聞いてはいけないような気がした。


 彼らの試合は第一決勝戦。

 遅くても、二十分後には試合が始まってしまう。

 クロードを相手に手を抜くことは許されない。

 ラーンにとって、本気の試合は久しぶりだ。

 今までが本気ではなかったと言うと、ラーンに負けた戦士に悪い気がするが、どの試合でもラーンは全力を出し切れていなかった。

 クロードとの試合は楽しみだった。

 そう頻繁に他国との争いが起こるわけではないから、『公開決闘』のようなイベントでもない限り、全力を出し切って戦いに挑むチャンスなどない。

 決して争い事が好きなわけではない。

 ただ、自分の力を試してみたいと思うだけなのだ。