「これから試合?」


「ああ。見てろよ、俺はお前と違って甘くはない」


「お手並み拝見とするよ。後学の為にね」


「……ラーンが、お前のこと怪しんでるぜ。お前の手は街で働いてるヤツの手じゃないってさ。期間中はラーンに近付かない方がいい。バレたら全部パーだ」


「分かってるよクロード。君こそハメを外さないようにね」


 彼はクロードに微笑み掛けて、すれ違いざまに肩を掴んだ。「決勝で対戦できることを祈ってる」


「お前こそ、負けんなよ」


 クロードの試合が始まった時、ラーンは何気なくスマルトの方を見やった。

 ──あれ? スマルトがいない。逃げ出した、ワケじゃないよね。

 気になったラーンは、

 ごめんね、クロード。

 と呟いて客席を後にした。