「ジュネスさんて、何やってる人なの?」


「何でまた、んなことを……」


「さっき握手した時、あの人の手──何となくだけど、街で働いている人の手じゃないな……って感じたから」


「さすがは騎士団長だ。アイツの試合、見に行こーぜ」


 ラーンとクロードが客席に行ったとき、既に、彼の試合は最終局面を迎えていた。

 彼の得物は長剣。

 風を斬るような速さで繰り出される技は、長年剣術を嗜んだ者の証。

 あっという間に追い詰められた相手は、戦闘不能になる前に、自ら負けを選択した。


「ジュネスさんて、強いんだ。人はホントに見掛けによらないね。あ、相手騎士団員だ。負けを認めるなんて、珍しいな」


「仕方ないさ。勝てない相手としぶとく戦うほど、騎士団員の人間はバカじゃねぇ。自分の生命が一番だからな」


「クロード、それって……」


 ラーンが言い終える前に、彼は踵を返した。

 ──なんだよその態度。何か僕に隠してない?


「次、俺の試合だからさ、ここでちゃんと見てろよ」


「──言われなくても分かってるって」