ラーンの説得の甲斐もなく、ついに『公開決闘』前日。

 周りが慌ただしく動き回っている中、ラーンは重い足取りでヴァレリスの部屋のドアをノックした。

 彼に呼ばれたのだ。


「……失礼します」


 ──絶対に怒られる。

 意を決して、彼はヴァレリスの顔を見た。


「ご苦労様。ラーン」


 ──怒っていない!?

 それどころか、彼は笑っている。

 何が何だかわからないラーンの手を取って、彼はぎゅっと握った。