──今の私を、兄はどう思うだろう……。

 ――私に国を預けたことに、後悔はないのだろうか。

 気の向くまま、足の向くまま。彼は歩き出した。

 彼の父親──前ナイティア国王・ギルティは、自然の緑を愛した。

 ここの見事な樹林は、彼の意志で造られた。

 彼の死後も王妃・スィーレを中心として、変わらぬ美しさを保っている。

 ──ここを歩く度、昔の記憶が蘇る。

 幼い頃。父に叱られたこと。母に甘えたこと。兄と疲れるまで遊んだこと。

 だがどれも、今では失ったものばかり。

 スマルトは、幹に寄り掛かるように座り込んだ。