長い廊下を歩いていると、スマルトの側近、ヴァレリスが前からやって来た。

 実のところ、ラーンはヴァレリスが苦手だった。

 スマルトの『公開決闘出場』について、一番反対している人物である。同時に、スマルトに参加を諦めるようラーンに説得させるのもこの男が仕組んだことなのだ。

――どうせまた、嫌味なこと言うんだ。


「こんにちは」


「やあ、ラーン。『公開決闘』は五日後だが、国王との話は進んでいるかい?」


「……はぁ」


「しっかりしてくれよ。今は君が頼りなんだから。───吉報を待っているぞ」


 ポンポンとラーンの肩を叩くと、乾いた笑みを浮かべながら、彼はラーンの横を通り過ぎていった。

――やっぱり嫌いだ。

 ラーンは溜息を吐いて、再び歩き出した。