「ねぇ、お礼にあたしに何かできることないかな?」
「何か? 口約束だけじゃ、不安か」
神藤くんはあたしを包むために開いていた腕を下ろした。
「そうじゃないの。ただ、あたしも何かしてあげたい」
この嬉しさをどうやって形にしたらいいのか。
わからないなりの、精一杯。
神藤くんはしばらく考えこんだ後、口を開いた。
「なら、彼女のふりをしてもらってもいいか?」
「彼女のふり?」
眉間にしわが寄る。
「そう。この前も言ったけど、今は彼女つくる気はないんだけど、わりと告白してくる子は多くてさ」
そりゃ、そうだろう。
神藤くん、カッコいいもの。
顔が整ってて、女が放っておくわけがない。
「だから、俺に彼女ができれば落ち着くかなって思って」
本当に?
神藤くんのことを好きなのに、彼女がいると思ってあきらめる子がいるかもしれないかと思うと、心が痛かった。
こんなこと、すべきじゃないのかもしれない。
でも、あたしの知らない『恋』という気持ち。
付き合いのまねごとをすることで、その気持ちに少しでも近づけるような気がした。
「……わかったわ。彼女のふりをする」
神藤くんの顔がすぐに晴れやかになり、あたしに手を差し出した。
「ありがとう!」
自分の手を重ね、その温もりを感じると、ぎゅっと握り返した。



