「あたし、人じゃないから」
「は?」
あたしから身を離して、驚いた顔をした。
「その首筋に並ぶあと、ドラマや映画で見たことがあるんじゃないの?」
思い当たるものがあったのか、神藤くんが息を飲む。
「まさか」
「そう。血を吸う鬼と書いて吸血鬼。あたしは人の血で生きてる。さっきも、神藤くんの血をいただいたの」
彼の瞳が大きく開かれる。
「俺をからかってるのか? そんなことあるわけが……」
「じゃあ、その傷はどう説明するの? 神藤くんこそ鏡でよく見たらいいのよ。そうしたら、人が噛んでできるかみ痕じゃないことはすぐにわかるわ」
人の歯というのは、長さがだいたい均等に並んでいるから、2本の歯のあとだけ残すなんてできないはずだ。
神藤くんは自分の首筋に触れる。
その指先が何度も二つの傷をなでる。
「あたしの歯は犬歯を伸ばしたり引っ込めたりできるの」
口を開いて、牙を見せる。



