「俺、ここを噛みつかれたよな」
「ご、ごめんなさい」
半歩、後ろに下がる。
彼から離れようとしてみるけど、その度に彼が大きく一歩、距離をつめてくる。
「あ、あの……」
何を言ったらいいのか、わからなくて、言葉にならない。
「俺、変な夢を見てるのかな。人間の髪や目が何もせずに色を変えるなんて。しかも、そんな鮮やかな赤は見たことない」
また後ろに下がる。
5回ほど半歩さがったら、背中が廊下側の窓にぶつかった。
神藤くんは左手を窓枠に――あたしの顔の真横についた。
「人にかみついて、髪や目が自然の人の色とは思えない赤に変わって、まるで……」
神藤くんは一瞬、言葉を止めると、低く言い切った。
「人じゃないみたいだ」
その言葉があたしの心を貫く。
あたしの瞳は彼の首筋をさまよう。
もう、隠しておけない。



