返事をしなくちゃって思うのに、声が出ない。
人にばれたかもしれないとき、どうしたらいいのかわからない。
「それに、その目……」
神藤くんの手があたしの頬に伸ばされる。
近づく血の香りでまた理性を失いそうで、その手を払った。
「ご、ごめんなさい」
両手を胸の前で握り合わせると、
神藤くんから離れて、スリッパのまま廊下へ飛び出した。
あてもなく、走る。
とにかく、どこかへ。
神藤くんのいないどこかへ。
あたしの足からパタパタと音が鳴る。
まるで輪唱のように、その後ろを追いかける音。
どこへ、どこへ逃げたら。
考えがまとまらない。
ただ、ひたすら、足を動かす。
廊下を走りぬけると、下駄箱にたどりついた。
ここから外へ出るべき?



