グラウンドの反対側では、男子が何人かでグループになって、ドリブルとディフェンスの練習をしている。
静の打ったボールを打ち返し、ラリーを続けていると、もうすっかり覚えてしまった血の香りが漂ってきて、
びっくりしてボールを打ち損じた。
「あ、ごめん!」
慌ててボールを拾いに行きながら、男子のほうを見る。
神藤くんの血が流れたのはたしかなこと。
でも、騒ぎにはなってないので、かすり傷だろうか。
ボールを拾って、ラリーを再開しても、ずっと神藤くんのことが気になって、よそ見ばかりしていた。
血の香りで飢えが加速する。
血が欲しい。
血の香りが動く。
香りの流れにそって見ると、神藤くんが男子の輪からはみ出した。
校舎へ向かっている。
ケガをしたなら、保健室?
「ヒナ、危ない!」
「え?」