一人になって、神藤くんの言葉を思い出す。
『好きでもないのに付き合って、その子にわずらわされるのが嫌なんだ』
彼はひょっとしたら、人を好きになるということを知らないんじゃないだろうか。
好きじゃない子と付き合えなんて言えないけど、自分を好きになってくれた子の気持ちを軽く見ている気がした。
今、好きじゃなくても、これからも好きじゃないって絶対に言える?
告白してくれたあの子ともっと向き合ってみれば、何かが変わるかもしれないのに、そうすることから逃げてるように思えた。
もちろん、他に好きな子がいるなら、きっぱり断ることが優しさだろうし、どれが正解ってことはないんだけど。
それに、あたしも人のことは言えない。
人を好きになるってなに?
吸血鬼の寿命は人より長い。
体の衰えも人よりずっとゆっくりで、人と一緒にいると、吸血鬼に老いはないと勘違いしてしまいそうになる。
そんなあたしが人を好きになれるわけがなかった。
同じ時を歩めない。
そうわかっているからこそ、壁を作ってしまって、恋しないようにしてきた。
しかも、人の血を吸うことが怖いなんて言ってるあたしには、簡単に人から血を奪える他の吸血鬼を好きになることも難しくて、
残酷に人にかみつく姿を見ていると、恋は冷めるばかり。
あたしはどこかおかしいのかな。