「さっきの断り文句、あれが正直な気持ちなんだ。好きでもない子と付き合う気はない」
「好きな子いるの?」
話を聞いて歩きながら、見つけた小石を蹴る。
なんだろ。
なんか、面白くない。
「好きな子はいないけど、俺さ、親父と二人で暮らしてるから、洗濯とか料理とか家事をやってて、それと学校で手いっぱいだ。
好きでもないのに付き合って、その子にわずらわされるのが嫌なんだ」
「……お母さんは?」
「離婚して、家出てった」
「……やだ、ごめん」
「別に構わないよ。とにかく、彼女なんて、今はいらないんだ」
「そっか」
返事をしながら前を見ていると、駅が見えてきた。
「方向、反対だよね」
「ああ。あ、俺の電車来てる」
定期通して改札を抜けると、階段を駆け上がりだす神藤くん。
小さな駅であたしのホームも向かい合わせになっているので、一緒に後ろをついていき、電車に乗り込む神藤くんを見送った。