夕暮れが彼を半分、斜めに照らす。
窓から入るのは、肌寒いほど涼しい風。
カーテンが揺れる。
その度に、西日も、彼の細い髪の毛も揺れる。
隠されそうで、隠れない耳元。
坊主刈りっていうほど短くなく、長髪っていうほど長くもない髪の毛は、耳の後ろでラインを描いていた。
その耳から繋がる太い首筋。
その皮膚の下に、ドクン、ドクン、と血液が流れていることを感じる。
それはあたしの本能。
教室の後ろのドアに手をかけて立ち、彼を見ていた。
ゴクンと喉を小さく鳴らして、一歩近づく。
他に誰もいない教室で一人、机に突っ伏して眠る彼はあたしに気づかない。
足は鳴らさない。
あたしだけが気づく、彼から放たれる香りで、口の中が潤う。
もう一歩、踏み出す。