時計仕掛けの宝石箱

響也にも心当たりはあった。

確か響也達が入学してくる前の話だが、赤城は入院をしていたと聞いた事がある。

それも肝臓癌でだ。

今年で齢六十四になる赤城は本校始まって以来の酒豪だったらしい。

そして退院直後に、「治ったから定年まで教員をやらせて欲しい」と頼んだという。

再発の可能性は否めない以上、ありがた迷惑な話だと思うが、学校側は了承した。

何にせよ、そんな事情のある赤城が行方知れずというのは、芳しい事態ではない。

どこぞの廊下で行き倒れていても、おかしくはないからだ。

教師は何かを呟いて、他の教員の元へと駆け寄って行った。

少しずつ騒ぐ声が増えていく中、不意に蜜羽は響也を見上げた。

「体調‥‥考え事は、大丈夫??」

言い換えたのは、体調は悪くないと響也に否定されるのを知ってたからだ。