時計仕掛けの宝石箱




階段を下りながらうんざりする響也に、前を行く蜜羽が立ち止まって声を掛けた。

「どうしたの?」

「‥いや」

本当は面倒臭いなんて言えないので言葉を濁す。

蜜羽は気にとめてないなのか、ふぅん、とまた足元を見ながら階段を下りていく。

響也は口の間から漏れそうになる溜め息を嚥下した。

少しばかりげんなりしている理由は、教室の配置が原因だ。

響也達が通う私立高校は、全五階建てのかなり大きめな校舎。

響也達の教室は四階の右端にあり、
目指す職員室は一階の左端。

無駄に長い廊下と無駄に多い教室のせいで、
普通の校舎より明らかに距離があるそこを歩くのが、響也にはこの上もなくかったるい運動に感じるのだ。