千日紅が咲いている

「それって、寂しくないの、恵ちゃん」

 ドキッとした。

 まただと思った。


 『無理してんじゃねぇの?』


 あの時と同じで、心配そうな顔をしてまっすぐ私を見ていた。


「大輔は、何かあっても言ってこないし。
自分で解決しようとするタイプだから、本当に何も話してくれないんだ。
だから2人が上手くやってるかどうかとかって、一緒にいるところ見て判断するしかなくてさ……今ふと思った。
恵ちゃんは、何か溜めてんじゃないのかって」


 心が暴れた。

 痛くて、押さえた。

 ヤスがその手を見て、さらに心配そうな顔をして、でもそれを見たらさらに痛くて。

 痛くて泣きそうになった。


「出ようか」


 ヤスがそう言って立ち上がった。

 突然どうして、と思って見上げれば、優しく笑ってくれた。

 伝票を持ってから、まだ茫然としている私に顔を寄せてきて、


「泣きそうだから。車で話そう」


と言って、歩いて行った。


 息がかかるほど近かったわけじゃない。

 キスできそうなほど近づけてきたわけじゃない。

 けれど、私は一瞬で死にかけた。