千日紅が咲いている

「あ、やべ!」


 大輔が突然、声を上げた。


「バイト遅れる!悪い、先帰るわ」

「おう。伝票おいてけ、おごってやるよ」

「まじで?サンキュー。恵、康弘に家まで送ってもらえよ」

「あ、うん。行ってらっしゃい」


 おう、と片手をあげて、慌ただしくファミレスを出て行った。


「相変わらずだなー」

「いつもあんな感じ」


 ヤスの言葉に返す。

 体をずらして、ヤスの前に移動する。


「ヤス、バイトは?」

「今日、休み」

「そうか。私も」


 そんな些細な共通点が嬉しいのはおかしいかな。

 机の下で見えない足を少し揺らしてみた。

 ヤスは机に突っ伏した。

 グラスがこっちに押し出される。


「てか、最近はあんまり入れてないんだ。卒論めんどいし」

「ねー、分かる」

「あー……本当に終わるのかわかんねぇー。あいつにはその不安はないのか?」

「どうなんだろう。あんまりそんな話、しないんだよね」