過去を振り返る。

 あの思い出の体育祭。

 ヤスと歩いた大輔までの道。

 今の私は分かるんだ。

 私の一言にヤスがすごく嬉しそうで、照れくさそうで、そしてすごく悲しそうだったこと。

 大輔との勝負に負けて、その告白に協力していたから。

 今ならあの言葉の意味も、あの顔をした理由もわかるのに。

 そのときのヤスは、私と違って気づいていたのかもしれない。

 私が好きなのはヤスだって。

 ヤスは勘がいい奴だから。

 あのときの私と同じように、淡い期待を胸に抱いてたかもしれない。

 私が首を振ることを望んでいたのかもしれない。

 私は気付かぬうちに、ヤスを振ってしまっていたんだ。


 大人になって分かることがある。

 今の私にはわからないこともある。

 いつになればすべて分かるようになるのか、人のことちゃんと見ることができるのか。

 まだまだ子供な私だから、あの頃の私を叱ることができない。

 もう少し大人になったら、叱ろうと思う。

 身勝手な自分を。

 罪悪感は巣食ったままだけど、いつか…。

 だから今から、叱る勉強をしておこうと思う。