「或いは手品師か、だな」



「…何にせよ先生には関係ないだろ」


「“泣きたい時には泣けばいい”。つまり、自分の気持ちに正直になれよ」


由優がピク、と反応する。



『自分に嘘吐いちゃ駄目だよ!』






「椎名?」

「…先生、靴。画鋲刺さってる」



「──ええっ!?」


足を持ち上げた日向に由優が少し笑う。

「嘘。帰る」

「あ?…お前がな?」

「うん、じゃあね」


鞄を拾い上げるように持ち上げて、由優は日向に手を振った。

(何だかなぁ)



先生に会うと、
調子が狂う。





「あ」

「何」


         ・・
「頬、冷やせよな。由優」




──奇妙な関係性の中に。