由優は一寸有り得ない位軽かった。
だから私でも彼を保健室に運ぶことは簡単なことだった。

「あれ、誰も居ない」

保健室は静まり返っている。



「…天使様」

な感じだった。
寝顔が。

男の子の寝顔なんざ初めて見たものだけれど、ファースト寝顔としてはラッキーなのかもしれなかった。

それくらい、綺麗。



ところで。

「…帰っていいのかな」


流石にストーカーみたいになってしまう。

「か、帰ります。お大事に」

一応断わってみる。



「…───うん」

「!え!」

(起きてた!?)


「俺も帰ろ、と」

「い…いつから起きてたの?」

由優は不思議そうにこちらを見た。
寝癖がついていて、寝かせた自分に責任を感じる。

「何で」

「いや、別に…」

「──…お大事にから。じゃ」

「あ、うん…」

「…」

ドアの前で由優がふと立ち止まる。


振り返る。

「ありがとう」





(ねぇ、今のは。)

何のありがとう?
運んでくれてありがとう?
天使様的にありがとう?



(判らない)