さとみは驚いたようだったが健太郎の真剣な眼差しに答える



「な、なによ急に、どんなドジって…えっと、ちょっと会議の予定を忘れちゃったり、取引先さんとの電話の内容を覚えてなかったり…とか?えへへ。まったくドジだよねあたしってw」


さとみはそう言って不思議そうに健太郎を見上げた。



「き、今日の約束…記念日の約束は覚えてるか?!」



さとみは首を傾げ、首を横に振って答える。



「覚えてないか?!ほら今日の朝!仕事に出る前に約束しただろ?!」




さとみは首を横に振るだけだった。





まさかそんな…





健太郎の記憶の奥底でなにかが小さくざわめき、そのざわめきは急激に膨張し、すぐに健太郎を支配していった。



そのざわめきの正体を突き止めるのに時間はかからなかった。



それは遠い昔、健太郎が幼い頃の記憶。


その遠い記憶が次第に甦り、まるでカメラのピントを合わせるかのように鮮明になっていく。