さとみと俺は数え切れないくらいの想い出を、ふたりの時間を刻んだ。




そして…

ふたりで暮らし始めて一年くらいが経ったある日、
さとみは落ち込んだ様子で呟くように言った。

「あたし最近ね…会社でドジってばっかりで怒られちゃって。凹む〜」

「あはは。おまえ以外とドジだもんな〜w」

「もぅ〜!笑い事じゃないんだからぁ!」

この時は気にも止めなかった。



それから一週間くらいして訪れたふたりの記念日。


その日はお互い早く帰って一緒に買い物に行き、おいしい料理を作って祝おうと約束した。

俺は記念日とかそうゆーのより今のが大事って考えで別にどうでもよかったが、さとみいわく

「ふたりの想い出をいつまでも忘れないように祝うものなのよ。過去のひとつひとつの想い出があってこそ今のふたりに繋がってるんだからね!」

だそうだ。妙に納得した俺はその日記念日を祝う事を渋々了承したのだった。




約束の時間になってもさとみは帰って来ない。


1時間…

2時間経過。

さすがにおかしいと思い、さとみの携帯に電話をかける。



トゥルルルル…。



「はい、もしもし。石原の携帯です」


まだ会社にいるようだった。


「おい、一体どうしたんだよ。随分待たせるじゃんか。」

さとみが驚いたように言う。

「へ?なにが?」

ちょっとイラっときた

「なにがじゃないだろ。なにしてんだよ!」

「いつも通りの残業だよ…。どうしたのよ急に…」

「今日記念日の約束だろ?」

「え?記念日ってなんの?」



頭にきてそこで電話を切った。

俺はしばらくイラついていたが冷静になって考えればあれほど記念日を祝う事を力説していた当の彼女がまるでその事を覚えてないのはなにかおかしい。

30分ほどしただろうか彼女が帰ってきた。

「ただいま〜」

俺は彼女に詰め寄りその両肩をギュッと掴んだ。

「さとみ!」

「い、痛いよ健くん!どうしたの?!」

俺は半ば怒鳴り加減で彼女に聞いた。

「さとみ、おまえ前に会社でドジばかりしてるって言ってたよな!どんなドジなんだ?!」