すぐに意気投合し、付き合い始めたさとみと俺は、それから半年くらいして二人で暮らし始めたんだ。

半ば彼女に押し切られる形で…

「家賃は少し高いけどふたりなら大丈夫よ。それにどうせならこれくらい広くなきゃ!」

す、少しどころじゃねんだけど…。

「いや、これ…」

彼女に抗議しようと口を開いた瞬間それを遮るように、

「あ!ほら見て〜眺め凄ーい!」

「あ!キッチンも広−い!あたしこれならお料理頑張れちゃう気がするっ!」

「健くんも食べたいよね〜あたしの作ったおいしい料理〜!」

「そりゃ食いてぇに決まってるけどよ…」

「じゃあ決まり〜!」



と、いった具合だ…。



彼女は覚えていないだろう。

こんな事があった。

ある時どこで影響を受けたのかさとみはパン作りにハマった。

「ね、これあたしが焼いたの。食べて食べてっ!」

あからさまに不細工な形のあんパンだった。

「うっ…」

ひとくち食べてみてそのまずさに言葉を失った。

「ちょっとォ〜!うっ…てなによ〜、うっ…てぇ〜」

彼女はそんなはずはないと言いたげにそのあんパンをひとくち。

……。

「うっ…まっず〜い!」

「だろっ?w」

「あ、ヒドーぃ!もぅ〜…よし!今日から毎日夜ご飯あんパン!あたし頑張るっ!」

「ちょ!それだけは勘弁!」





ふたりで大笑いしたよね。

さとみは覚えてるかな?






ある日俺が仕事から帰るとさとみ泣いていたね。

まるで子供のように。

どうしたのか聞くと、

「実家で飼ってた猫の…ミミが…死んじゃったの…」



いつまでも泣き止まないさとみと一緒に俺も朝まで泣いたね。



泣き疲れソファーで眠ってしまった君をベッドに運ぶ時、

君はこう言ったんだよ



「健くん…健くんはずっとあたしの傍にいてね…あたしを置いてどこかに行ったらヤダ…よ」

君をベッドに寝かせて

君の寝顔をいつまでも見ていた

心から愛しいと思った。