「あ、あたしもう行かないと。」
さとみは少し考えて言った。

「んー…あっそうだ!ね、君携帯持ってる?」

健太郎が驚いたように返す。

「持ってっけど?」

健太郎が携帯を取り出して言った刹那。

「じゃちょっと貸して。」

「え、なん…あ、おい!」

え、なんでおまえに貸さなきゃいけねーの?を言い切る前に健太郎は携帯を奪い取られた。

ピッ…ポッパ…
ピピッポ…ピ…

「はい、これ。」

「え、なんだよ?」

健太郎は状況を飲み込めぬまま聞いた。

「あたしの携帯番号入れといた!ちゃんとかけてよ?じゃあもうあたし行かないとっ!」

そう言って彼女はかけ出した。

「あ、おい!ちょっと待てって!おいっ!」

さとみは名前も告げず、瞬く間に真夏のオフィス街に姿を消した。




こうして俺とさとみは出会った。




そして始ったんだ。

彼女と俺の忘れられない三年間が。