それから数週間が経った。

ある日、健太郎が仕事から帰ると、さとみがなにかを作っていた。

あんパンだった

健太郎が駆け寄る。

「さ、さとみ!記憶があるのか?!」

健太郎の祈るような言葉が漏れた。

「うん!あたしね、なんだか今日はとっても気分がいいのw」

「ほら、焼けたよ!健くん食べてみてw」

「お…オゥ!」

ひとくち。

「うっ…うまい!うまいよさとみ!」

「ヤッタ!えへへ〜w」

お世辞ではなく本当にうまかった。

こんなにうまいあんパンは食べた事がないほどにうまかった。

まさかまたさとみのあんパンが食べれる日が来るなんて思ってもいなかった。

これまでの辛く暗い日々が走馬灯のように脳裏を過ぎる

健太郎の目に思わず涙が溢れた

真っ暗闇に指したほんのわずかな小さな小さな希望の光

その小さな光は深い暗闇を全て打ち消すほどのまばゆい光に思えた

「やだぁ〜、健くん泣いてるの?プッwあはははw」

出会った頃と変わらぬそのままのさとみだった

「ばっ、な…泣いてねぇよ!」

ふたりでまた笑った






ほんとに幸せだった







だがその小さな光はすぐに深い暗闇に覆われた