別々に入院していたおばあちゃんにはおじいちゃんが他界したことを

知らせなかった

おばあちゃんにはもう体力がなく

悲しんで憔悴してしまうことを

家族も病院も恐れたからだ

おじいちゃんが天国にいった後

おばあちゃんが

夜、帽子被って杖をついた人がお見舞いにきた

とたまに言うようになった

おばあちゃんは目は悪くても頭の方はしっかりしていた


でもそんな知り合いはいない

親戚の人達は

「おじいちゃんがむかえにきよる」

と 口々に言っていた

でもおばあちゃんはその後とても長生きをした

私はおばあちゃんを
励ましにきたんだ、と思っている


その帽子に杖の人は
おばあちゃんが他界する直前まで来ていた