「あたしのこと…傷つけてない?」



「あぁ…俺が雨宮と付き合ったってお前が傷つく必要はねぇだろ。旭がいんだから。」



そのとき、あたしの中で何かがプツンと切れた、気がした。



「…………陽。」



あたしに背中を向けた陽を呼び止める。



振り返った瞬間、あたしは思いっ切り陽の左の頬を殴った。



グーで。



人を殴ったのは初めてだった。



陽は2、3歩後ろによろけたあとビックリした顔であたしを見た。



ビックリしたいのはこっちだっつーの…



「…あたしがいつ好きだって言った?付き合いたいって言った?」


「それは…」



「言ってないのに勝手に自己完結すんなっ!」



「…………………」








「あたしはねー………アンタのことが…好きなんだよ!!バーカ!思い知れ!」






カバンを抱えるとあたしは市瀬家を飛び出し、自分の家へと逃げ込んだ。