「…こっち向け、コラ。」


「う…な、なんでですか。」



おびえるように肩をすくめるあたしを見て、陽は大きく深呼吸したあと、膝の上に置いていたあたしの手を握った。



あたしより絶対冷え症だ、と思えるくらい手は冷たくてゴツゴツと骨っぽかった。




「……ごめん…お願いだから、こっち向いて?」



陽にしては怖いくらい優しい言い方に反射的に振り向いてしまった。


数センチ先に陽の顔があって、何かの拍子で今にも唇がくっついてしまいそう。


ふと文化祭のときに抱き締められたときのことを思い出して顔が熱くなる。



見上げた陽の顔はどこか切なそうで、そういえばさっきもこんな顔してたな、なんて思った。



「…なんで、お前、そんな悲しそうな顔すんの。」


「…え?し、してる…?」



自然に笑ったつもりだったけど、確実に顔が引きつった気がする…


最悪…!
絶対変に思われるよ~!



「……今にも泣きだしそうなのは、なんでだよ…真美のこと聞いて、落ち込むのは…どっちに対してなんだよ…」


泣きそうって…

陽だって十分切なそうな顔してんじゃん…