しばらく重苦しい沈黙が流れた。


あたしの頭の中はショックが8割、『この状況をなんとか回避しないと』思考が2割でうめ尽くされていた。


だが、意外にも沈黙を破ったのは陽の方だった。



「…でも、もう過去のことだから…俺にとっては。アイツもきっとそう思ってるし…」



「…うん。」



そう答えるのが精いっぱいだった。


笑って返せばいいのか、ショックだってヘコんで返せばいいのか、どうやって返すのが正しいのかあたしには分からなかった。


自分が今どんな顔してるのかも分からなかったけど…相当変な顔になっているに違いない。


だって、陽、あたしの顔をしかめっ面でずっと見てるもん…


陽はフッと息を吐くと、立ち上がりあたしのとなりに腰をおろした。


旭とは違う香水の香りが鼻をくすぐった。

そうそう、これが陽のニオイなんだよね…


そんなノー天気なことを考えるだけの余裕がある自分にちょっとだけ腹が立つ…





「おい。」



思ってたよりも意外と近くで声がしたのに驚き、あたしの肩はビクンと揺れた。