声のするほうに目をやると、陽がボールペンを器用にクルクルと回していた。



「ん、じゃねーよ。プリント、よこせ。採点すっから。」


「ああ…はい。」



「……んだよ、全然書いてねーじゃん。」


「う……ごめん。」



「別に謝ることじゃねーけど。」



白紙のプリントとあたしを見比べながら陽は「はぁ」と小さくため息をついた。



「……らしくねーじゃん。」


「…え?」


「やけに静かで気味が悪い。」


「気味悪いって…!」



ほかに言い方あんだろーが!



「なんかあったか。」


「…いや…別に…なんでもない!」



「…ふーん。ならいいけど…。」




………んっ?



聞こえるか聞こえないかくらいの声でそうつぶやいた陽は、白紙のプリントをあたしに返した。




あれ……?
ウソ………


もしかして…コイツ、



心配してくれてる?



『麻衣のこと気に入ってるみたい。』



なっ!!
ななななに考えてんだあたしは!

忘れよ…

そうだ!
忘れよう!!


そもそも旭の言うことを真に受けちゃダメでしょ!


そうだよ、なに真剣に考えてんだろ…


考えるだけ時間のムダだよね!