先生、


質問です。


勉強ってなんのためにするんですか?



エラい人になるためですか?


わたしはエラい人にならなくてもいいので、勉強しなくていいですか?



「先生、あたし…世の中には勉強よりもっと大切なことがあると思うんです!」



青春ドラマみたいなクサイことを何のためらいもなく真顔で堂々と言ってみる。




小泉 麻衣。
高校2年生。



「ふぅん。確かに俺も勉強が全てじゃないとは思う。」



腕組みしたまま渋い顔で答えるのは、担任(数学担当)のツトムくんこと、前田 努(まえだつとむ)


三十路の一歩手前、29歳・独身。



「で、俺が聞きたいのはそんなことじゃなくて、このクソみたいなテストの点数のことなんですけど。」



ツトムくんが机の上にあったあたしのテスト用紙を親指と人差し指で汚いものをつまむように差し出して見せた。




名前の横にハッキリ刻まれた数字、





7点。




「クソみたいって…」


「クソじゃ不満か?」


「超不満。」


「じゃあ、カスだな。カス。カス点数。」


クソ以上にヒドい!



「これ、ぜーんぶ昨日授業でやった問題で、クラスの平均点90点以上だぞ。」


「マジで!?」