「走って逃げたくらいだし。」


・・・うんっ?!

私、にげたり、した?


・・・あの程度のことで
逃げるキャラじゃ
ないでしょ・・・?

覚えがないぞ・・・


「私、にげたりした?」


疑うような視線をむける。


「思いっきり、
走り去ったけど・・・?」


確かに、あの日は
慌ただしかったのよ。

小切手を預かって・・・

「ああっ!
小切手もってて・・・
窓口の時間がぎりぎりで
銀行まで走ったかもっ。」

で、会社に戻ってすぐ、
出向のピンチヒッターの
話があったんだよね。

「じゃあ、あの鍵、
なんでだよ?」

訝しげな目を向けて
彼はいう。


「樹里んちの鍵、
持って行くわけにいかなくて
ポストに入れて、
家に帰ったんだけど?」

で、荷造りをして
部屋の解約とか、走りまわって
翌週には東京にいたんだ。

「じゃあ、携帯電話はっ?!」


携帯・・・?

「ああ、水没しちゃった。

ってか、トイレに
流しちゃって(^^ゞ

みんな付き合い長いから、
連絡先、控えていたんだけど。
樹里のは、控えてなくて。

里奈ちゃんにも
聞きにくくてね。」


今に至る。