兄上)「どれ程心配したと思っておる…さぁ、お恋、わしと帰るぞ。」


ジャリ…


兄上が近づき手を伸ばす。


この手に捕まる訳にはいかない…

私はとっさに兄上をすり抜け、一目散に走り出した。


はぁ…はぁ…はぁ…


兄上)「捕らえよ!」


兄上の命令に武士達が大きな音をたて、追い掛けて来る。



はぁ…はぁ…はぁ…


時折、後ろを振り返り、私は必死で走り続ける。


どんなに狭い脇道に入っても、彼らは的確に、追い掛けて来る。


「しつこい…!!」


私の必死な逃走も虚しく、徐々に距離は縮まって…


私の体力もそろそろ限界に近付いた。



「だ、ダメ、このままだと…!」



と、その時。



ドン!!


後ろを振り返りながら走っていた私は、誰かにぶつかって、その衝撃で倒れ込んだ。


「す、すみません!」


???)「なんだ、またお前か?」


その聞き覚えのある声に私は顔をあげる。



「時宗…」