私が慌てて店に戻ると、武士が数人で怒鳴り散らしていた。

武士)「おい!女将!早く女を出せ!ここにいる事はわかってるんだ!」


女将)「お恋ちゃんに何か用でもあるのかい?答えによっては呑めない話だねぇ。」


武士)「何を!おい、女将さんよ~?こっちはなぁ、殿直々の命令で動いてンだよ!」


武士はどっしりと構える女将さんに、ジリジリと詰め寄る…。


「やめて!女将さんは関係ない!お恋ならこの私よ!さあ、用件は何なの?!」


武士は女将さんの前に立ちはだかった私の姿を見ると、一瞬目を見開き驚いた。

武士)「お…お前が…!」


???)「お恋か……?本当にお恋なのだな…?」


不意に、ある男が武士達をかき分け前に出て来た。


???)「ずっと探していたのだぞ?お恋…。」


男は切なそうに顔を歪め、私の手をギュッと握りしめる。


ゾク……


急に血の気が一気に引き、全身がガタガタと震えだす。

私…この人を知っている…。


断片的に蘇る映像に、恐怖からとっさに彼の手を払いのける。


「あ…あ…兄…上………っ」


唇が無意識にそう呟いた。