なんだか急に意味のない不安におそわれてなにか鏡のように顔を映せるものを探してあたりを眺めていると部屋のドアの前に誰かがしゃがんでいることに今になってようやく気が付いた。
(トクン)
遠くの方で何かが弾むような音が聞こえた気がした。
髪が長いというだけで女だと判断するのはとんでもなく時代錯誤なことだが、なんていうか全体の雰囲気でそこにいる人が女であることはすぐにわかった。
(トクントクン、ドクンドクン)
どこからともなく響いてきた鼓動が自分の心臓の音だと気付くまでにずいぶんと時間がかかった。
おれが空気になってから周りで起こることは全て形や重さのない自分を素通りしていき、自ら何かアクションを起こしたり何かに対してリアクションすることはまったくなかった。
かといって、驚いたり多少の喜怒哀楽を示したりする程度のことはあったが、それでも、OLが禿げたセクハラ上司に頼まれた書類のコピーをするように、やる気のないコンビニの店員がレジを打つように、機械的な最小限の動きで事務的に感情を処理していくだけだった。
おれの空気としての性質とはうらはらに鼓動はそのスピードを増して体中を駆け巡っていった。
(トクン)
遠くの方で何かが弾むような音が聞こえた気がした。
髪が長いというだけで女だと判断するのはとんでもなく時代錯誤なことだが、なんていうか全体の雰囲気でそこにいる人が女であることはすぐにわかった。
(トクントクン、ドクンドクン)
どこからともなく響いてきた鼓動が自分の心臓の音だと気付くまでにずいぶんと時間がかかった。
おれが空気になってから周りで起こることは全て形や重さのない自分を素通りしていき、自ら何かアクションを起こしたり何かに対してリアクションすることはまったくなかった。
かといって、驚いたり多少の喜怒哀楽を示したりする程度のことはあったが、それでも、OLが禿げたセクハラ上司に頼まれた書類のコピーをするように、やる気のないコンビニの店員がレジを打つように、機械的な最小限の動きで事務的に感情を処理していくだけだった。
おれの空気としての性質とはうらはらに鼓動はそのスピードを増して体中を駆け巡っていった。
