空気になって2週間ほど過ぎたある日、その日は朝から雨が降っていてバイトから帰ってくる頃には地面に落ちた雨粒が跳ね返って安物のジーンズを鉛のような重さに変えていた。
それはまるでよく映画や漫画にでてくる奴隷が付けられている足枷のようにおれの足どりを一段と重いものにしていた。
人一人がやっと通れるような細い路地を抜け、いつものようにアパートのアンチバリアフリーな急な階段をいっきに登りきった。
マジックの汚い字で田中と書かれた表札を見て条件反射のようにホッとしている自分が心の隅っこにいることがおかしくて自分でも気付かないうちに笑っていた。
自分が今でも”田中”という名で生活していることへの自虐的な笑いではあったが、それにしても久しぶりに笑った。
別によく笑う方だったとか笑顔が素敵だとよく言われた、ということはなかったが少なくとも意識することもなくささいなことで笑っていたはずだ。
笑い方を忘れてしまったわけではなかった。
ここは笑う場面だと頭の中ではわかっていることもあった。
ただ上手く笑える自信がなかっただけだった。
それはまるでよく映画や漫画にでてくる奴隷が付けられている足枷のようにおれの足どりを一段と重いものにしていた。
人一人がやっと通れるような細い路地を抜け、いつものようにアパートのアンチバリアフリーな急な階段をいっきに登りきった。
マジックの汚い字で田中と書かれた表札を見て条件反射のようにホッとしている自分が心の隅っこにいることがおかしくて自分でも気付かないうちに笑っていた。
自分が今でも”田中”という名で生活していることへの自虐的な笑いではあったが、それにしても久しぶりに笑った。
別によく笑う方だったとか笑顔が素敵だとよく言われた、ということはなかったが少なくとも意識することもなくささいなことで笑っていたはずだ。
笑い方を忘れてしまったわけではなかった。
ここは笑う場面だと頭の中ではわかっていることもあった。
ただ上手く笑える自信がなかっただけだった。
