先生の青




虚ろな目をしたまま
先生は黙りこむ


だんだん不安になって


「先生?………先生!」



声をかけると
ハッとして


「……ご、ごめん。
だから、もう大丈夫だ」



先生は取り繕うように
私の頭を撫でて



「本当は奴の顔見た瞬間
殺してやろうかって
思ったんだけど」



「ええっ!」



先生は笑ってたから
冗談だと思った



「世の中の平和のため
殺しても……良かったけど
あんなクズ

でも、そんな事したら
イチに迷惑かかるもんな

だから帰り際
カフェ出てすぐ
一発殴って我慢した」



「殴った……の?」


ふんって口元だけ笑った
先生の目はゾクッとするほど
殺気に満ちて



英雄さんを説き伏せたのは

社会的に冷静な脅しではなく

先生の その目じゃないかな



世の中の平和のためって


正当化できる殺意



自分を かえりみない行動


それは すごい狂気のような……




「イチ?」


考えこんだ私の顔を

のぞいた先生はいつもの先生



「もう安心しろよ

もし、まだ何かあったら
いつでもオレがお前を助ける」



「……ありがとう、先生」



一瞬でも先生を怖いと
感じた事を恥じた



この人がいなかったら

私は今

生きていなかったかも知れない


雨の中


先生が私を
助けてくれなかったら


今頃 私は どうしていただろう



帰る場所もなく


雨の中


私は どうしていただろう



 オレはイチの
 帰る場所にならないか
 居場所にならないか



びしょ濡れの顔で
私を捕まえてくれた



先生が 先生だけが


私の帰る場所


私の居場所