しばらく
先生の言葉を待ったけど
先生は一言も口を開かない
沈黙に耐えきれなくなって
「先生、英雄さんと
どんな話をしたの?」
先生は見上げた天井から
ゆっくり私に視線を移して
「うん。まあ、いろいろ」
「いろいろって?」
「……もう大丈夫だって
言ってるのに
やっぱり
気になっちゃいます?」
変な言葉使いが
少しカチンときたけど
先生は英雄さんと会って
ストレスを感じたんだろう
当たり前だけど
それを
私に感じさせたくないんだ
「ちゃんと話を聞かなきゃ
安心出来ないよ……」
先生は低い声で
「うん」って うなずいて
「少しね、拍子抜けした……
っていうのが正直な感想」
「拍子抜け?」
先生は目を伏せて
「最初はね、英雄くんも
興奮した様子で
わめいてたんだ
『お前に関係ない』とか
『お前、市花に
手を出したんだろう』とか」
英雄さんの姿が
容易に想像できて
先生に対する申し訳なさで
いっぱいになる
「だけど……」
先生は言葉を選びながら
ゆっくり話した
「社会的に見て
英雄くんのした事を
冷静に話すと
あっけなかったぞ
まあ、彼も医学生で
自分の将来を
大切にしてる人だから
多少の脅しが効いたのも
良かったけど」



