先生の青




落ち着け


息を深く吸って


「今日、駅前のカフェに
来て欲しいんだけど」


『なんでだよ』


「話があるから」


ふん、鼻で笑ってから


『また、この前みたいな
下らない事か?』


英雄さんの言葉に


あの夜がよみがえる


無理やり押さえつけられる恐怖


叫んでも届かない声


痛みは感じるのに
自分の身体は
まるで道具みたいで


帰り道

車の窓から見た夜は とても深く
私を嘲笑うように綺麗だった


確かに あの夜 私は死んだ


それを英雄さんは


下らない事と簡単に言う



言葉を失った私の手を
温かい手が握りしめた


顔を上げると
いつの間にか先生がいた


口の動きだけで
〔かわるよ〕
って言ったから


私は首を横に振り



「お願い。来て」


英雄さんは
少し考えるように間を置いて


『わかったよ。
じゃ2時でいいか?』


「2時?」


先生がうなずいたから


「じゃ2時に」



ケータイを切ると


身体中の空気が抜けるくらい
息を吐いた



「よし、よく頑張った。
あとはオレに任せな」


……任せなって


「イチは ここで待ってて
オレが終わらせてやるよ」



「私も行くよ、
だって自分の事だし」


先生は首を横に振り


「イチはいない方がいい
この前、迎えに来た男だろ……
顔、覚えてるから」


本当に大丈夫かな


いいのかな


不安でいっぱいだけど


先生の横顔は


私に有無を言わせない


そんな頑固さが滲み出てた