訊きたいけど訊ける
空気じゃない
仕方なく私は
テーブルの上に置いた
ケータイに手を伸ばした
それを横目で確認してから
先生はキッチンへ向かった
>今日、駅前のカフェで
>会えませんか?
メールを打ちながら
キッチンの先生を見ると
特に何をするでもなく
シンクの縁に両手をついて
深いため息をついてた
メールを送信すると
すぐケータイが震える
画面には
着信 一ノ瀬 英雄
……ど、どうしよう
困ってキッチンを振り向くと
先生も私を見つめ
「出な。
オレの事は言うな。
だけど、どうしても来ないって言うなら変われ」
うなずいて通話ボタンを押す
緊張で心臓が痛い
「……はい」
『市花。お前、昨日
どこ行ってたんだよ』
耳に響く、不機嫌な声
……夕べ私の部屋に来たんだ
そう思うと
ケータイを持つ手が震えた
「友達の家に泊まったの」
『はあ?
あまり勝手なマネすんなよ』
英雄さんだって
しょっちゅう外泊する
だけど私は彼にとって所有物
遊ぼうと思った時
おもちゃが勝手に外泊してちゃ
ムカつくんだろうな……
わかってるのに……
いちいち傷つくなよ、私



