どこをどう歩いてるかなんて
もう わからなかった
暗い道を ただひたすら歩いた
びしょ濡れで歩く私を
たまにすれ違う人が振り返る
どんなに歩いても
たどり着く場所なんてない
「………!」
「…………チ!」
バシャンッ
すぐ後ろで水の跳ねる音がして
「市花っ!」
振り返る前に腕を捕まれ
差し出された傘が雨をしのぐ
「……やっと…みつけた…
……………イチ………」
息を切らした その人は
「………み…しま…せんせ…」
呆然と呟く私を見て
「何やってんだよ
こんなに濡れて……
こんな時間にふらふら歩くな
危ないから」
なんで先生がいるんだろう
なんて考えられないくらい
頭の中は空っぽだった
だけど 次の瞬間
先生が口にした言葉
「さ、帰ろう」
帰ろう?
「…………や……」
「イチ?」
首を横に振り
捕まれた腕を
振りほどこうと
暴れた
「いやっ!……いやぁ!」
「イチ!どうしたんだよ」
先生は傘を落とし
私の腕を両手で掴んだ
握りしめた手で
先生の胸をたたき
「離してっ!いやぁ!離してっ」
帰ろう なんて
「帰る場所なんて………
帰る場所なんてないっ!
どこにもないっ!
帰る場所どころか……
居場所すらないよぉ……」
泣き叫んだ私を
先生は息を飲み見つめた



