ドクドクドクドクドクドク
急に動悸が激しく
カバンを持つ手が震える
よりによって車…………
車で迎えに来るなんて
乗ってしまえば足を奪われる
自由に身動きが…………
「イチ?」
ハッ
先生を見上げると
「知り合いか?あの車
イチのこと見てるけど」
フロントガラスの奥
英雄さんの切れ長の目が
真っ直ぐ私に向けられる
「も、もしかして彼氏か?」
何で先生が動揺してんの?
………逃げるわけにいかない
連絡したのは私だもん
「………義兄です」
私が小さな声で言うと
先生は安心した声で
「お義兄さんか
そっか、そっか
迎えに来るなんて
良かった、
家でうまくいってるんだな?」
………そう思うよね…
「じゃ、イチ また明日な」
くしゃくしゃ
少し荒く私の頭を撫でてから
先生は歩いて行ってしまった
だんだん離れて行く
先生の背中から
目が離せなくて
小さくなっていく背中が
とても哀しく
一気に心細くなった時
車のクラクションが鳴って
英雄さんがあごで軽く
「早く来い」ってした



