先生の青





産みたい
そう自分の気持ちを
認めてしまってからは
何かに憑りつかれたように



産みたい
中絶なんか出来ない


お腹の子を殺すなら
私も一緒に死ぬ
堕ろすなら
死んだ方がましだ




頭の中
同じことばかり
ぐるぐる考えてた



堕ろすくらいなら
お腹の子と一緒に死んでやる



意思はもうはっきりしたのに
自分の思いに
興奮してしまってて
具体的な対策は
思いつかなかった




とにかく
明日の手術はキャンセルだ



そんなことを考えながら
放課後、学校を出ると
ケータイが鳴った




画面を見ると先生からで



こんな時間になんだろう?
だけど、ちょうどいい
今なら言える




駅に向かう道を歩きながら
ケータイを耳にあてた



「はい」


「あ、市花さん?」


三島先生からの着信なのに
ケータイ越し
耳に聞こえたのは
女性の声だった



「………え?」


わけが分からず
戸惑った声を出した私の横を
青いランドセルの小学生が
走って通り抜けていく



「私、覚えてるかな?哉絵です
史絵の姉の哉絵です。
病院で一度…………」



「わかります」



わかるけど
なんでカナさんが
先生のケータイ………



カナさんはまるで
自分に言い聞かせるように



「落ち着いて
落ち着いて聞いてね」



その声は緊迫感を
隠しきれていない



私は歩道の端に
立ち止まって
カナさんの言葉を聞いた



遠くで無数の油蝉の
重なりあう声が
鳴り響いてた