現実はいつも私に厳しい
いや、違う自業自得だ
駅のトイレ
狭い個室の中
手にした検査薬の判定から
目が離せなかった
1分も待たないうちに
浮かび上がった陽性の印
目の逸らしようのない
現実を私に突き付ける
ただ立ち尽くす私の耳に
手洗い場の方から
同い年くらいの子の
明るい声が響いた
「そのグロスいいねー」
「使う?」
「そういえばさー、
隣のクラスの山内?」
「ああ、山内がどーした?」
「アイツこないだ
街で見たんだけど……」
彼女たちの会話は
どんどん離れて
トイレを出て行ったんだろう
「山内」がどーしたか
聞こえないうちに
フェードアウトしていった
この小さなトイレの個室が
この世の果てのような気がして
永遠に抜けることの出来ない
迷路に入ってしまったようで
ただただ不安で怖かった



