振り返らなくてもわかる
声の主は
「そっか、森さんか」
はがした写真の一枚を見ながら
私は振り返らず言った
「よく撮れてるね、これ」
森さんは私の言葉を無視して
「三島先生は愛夏の全てだった
『愛夏がウザい』って
皆言うけど
三島先生だけは違った
いつも愛夏を守ってくれた」
うん。
この子の気持ちはわかる
「彼女いるって……
三島先生から聞いてた
『いつも支えになってくれる
すごく素敵な女の子で
正直オレにはもったいないんだ』
三島先生にそこまで言わせる
彼女が見たくて
先生の帰り、あとをつけて
マンション調べて
ずっと張り込んでた
ただ一目 先生の彼女が見たくて
なのに、彼女って………
一ノ瀬先輩なんだもん」
森さんの声が震えてた
「………ズルいよ、先輩
先輩は友達もいて
何もかも持ってるのに
愛夏は三島先生だけだったのに
ズルいよ、ひどいよ
先輩はズルい………
先輩と違って
愛夏には
三島先生だけだったのに」
「ぷ」
思わず吹き出してしまう
「一ノ瀬先輩?」
「あ、ごめ……でも
ふふふ……あははっ」
おかしくて仕方ないよ
何もかも持ってるって
誰のことだよって感じ
すごいな
何も知らないとは言え
他人の目からは
そう見えるんだ………



