先生の青





ぶたれた頬を押さえて
英雄さんを見上げると



一瞬 困惑した表情を浮かべて
ベッドから降り
2、3歩、後退って
呆然と英雄さんは呟いた



「…………お前が悪いんだ」




血の滲む唇に
手の甲を押しつけて

「勝手に家を出るなよ
わかったな」


低い声で言って
英雄さんは部屋を出て行った




ベッドに寝転がったまま
熱を持つ頬に
手のひらを当ててると
だんだん痛みを感じてきた




目尻から涙がこぼれ
耳の方に流れて落ちていく




なんでだろう



私、なにか悪いことでもした?



なんで こんな目に
遭わなきゃならないの?



一度はお腹の中にいた私を
堕胎させようとしたクセに



お父さんにとって
私は幽霊みたいな物じゃない



自分の汚い女遊びで出来た子供
てっきり産まれてないと
思ってた子供なのに


産まれて来なきゃ良かったのに




こんな目に遭うなら………
産まれて来なきゃ良かった



「う、うぅ――――――」



ヒリヒリ痛む頬に
涙がポロポロ伝っては落ちた




…………先生


先生のところに帰りたい
先生のところに帰りたい



この世界で
私に優しい場所は
先生のところだけだ



「先生のところに帰る……」



呟いた声は
静かな部屋に溶けて消える
誰の耳に届くこともない