お母さんを責める言葉は
一つも出て来なかったけど
ひとしきり泣いたら
頭がスッキリした
どんなに傷ついても
立ち上がるしかないんだ
お風呂で長いこと泣いてたから
二人ともすっかりのぼせて
髪を乾かしてから
コンビニでアイスを
買いに行くことにした
傘を持って
マンションの
エントランスを出ると
「あ、雨上がってる」
先生が夜空を見上げて言った
まだ 雲に覆われてるけど
切れ間からは星が一つ見えた
「行こう、イチ」
差し出された先生の手に
私の手を重ね合わせ
指を絡める
私はまだ恵まれてる
ひとりぼっちじゃないから
この手を離さないために
立ち上がるしかないんだ
濡れて黒く光る
アスファルトの夜道
先生はわざと水溜まりを
思い切り踏む
跳ねた水が足にかかり
「ちょっと先生っ!」
私が怒るたび
いたずらっ子みたいに
「へへ」って笑ってた
コンビニでは
ちょっと得意げに
「いいぞ、ハーゲンダッツで」
まだ選んでもないのに
アイス一つで威張れる先生が
少しうらやましい
「私、チョコモナカでいい」
「ええっ!遠慮するなイチ
それくらいの甲斐性はあるぞ」
ハーゲンダッツで
甲斐性言われても……
ビールと柿の種
チョコモナカとピノ
(結局自分だってハーゲンダッツじゃないし)を買って帰った
繋いだ手を離さないように
きつく握りしめて



