「…………イチ」
薄闇に包まれた静かな部屋
外から いつ降りだしたのだろう
しとしと雨音が聞こえてた
私の髪や背中を撫でる先生が
少しかすれた声で言った
「………………イチ
オレすごい勝手だなって
自分で思うんだけど……
今、嬉しいんだ
イチがこんなに傷ついて
いい事なんかないのに
なんか、すごい嬉しい」
ギュッ………
先生は私をきつく抱きしめて
「つい、この前までさ
イチが卒業後進学して
遠距離になっても大丈夫って
本当に思ってたのに
こんな風に…………
イチが手に入ったなんて
イチを自分の物にできるって
内心 喜んでる自分が
信じられないんだけど
高校だって卒業させてやりたいって思いも変わってないけど
…………ごめん、イチ
すごい嬉しい
サイテーだな、オレ
イチがすごく欲しかったんだ
もう、どこにも帰さなくていい
そう思うと、すごく嬉しい
……………こんな思い
絶対に正しくないけど
ごめんな、イチ
怒っていいよ」
先生の胸におでこをつけ
首を横に振った
先生が私を求めてくれないと
私の居場所は
世界中のどこにもない
「………イチ、好きだ」
耳に囁かれるその言葉は
蜜より甘い
重なる唇は柔らかい
服に入り
素肌に触れる手は温かい
覆い被さる身体の重みは
私を捕まえてくれる
「愛してるよ、イチ」
温めてほしい
そして
孤独も絶望も届かない
深いところまで
溺れさせてほしい



